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無題
 
男と少女が、薄暗い路地のつきあたりに立っていた。少女は淡い桃色のワンピースを身に纏い、同じ色のリボンで髪を結っている。どこかの令嬢だろうか、到底こんな場所にはいないだろう美しい少女だが、反して顔つきは冷静だった。対して男の方は、目立たなかった。否、暗闇に紛れていなくなり、何時しか存在すら忘れ去られてしまうのではないだろうかと思うほど、闇というものを纏っていた。男の方は顔の半分ほどが髪の毛やらコートやらで見えないせいかもしれない。だが例えるなら花のような、可憐な少女とは到底接するところがないだろうと思う。
少女は男に近付くと、男ではなく、男の足元に視線を移した。男の方はそれに構わず、ただ立ち尽くしている。少女はふふっと声を出して笑うと、

素敵なお人形ですね、

と一言声をかけた。完璧なまでの微笑を携え、男にもう一歩と迫る。だが自分を拒ませないその勝気な態度にも、男は動こうとしない。少女は暫くの間男の返答を待っていたが、やがて諦めたのか溜め息をひとつついて後ろに退いた。男はそれを見るなり、

これを人形だと思うなら、貴女様は随分と箱入り娘でいらっしゃる。

と口元だけの笑みを零して呟いた。少女は突然の侮辱に当然いきり立ったが、ふとした瞬間目に入った男の足元のそれに目を見開き、なにかを叫びながら路地の向こうの明るみへと消えていった。男はそれを、ただただ蔑むように、嘲るように見つめていた。
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